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第35回 友よ、また会おう 最終回

40歳を過ぎてからゴルフを始めた、かなりの遅咲き。スポーツは苦手、というよりも、かなりの運動音痴。そして小心者、おまけにかなりの泣き虫。何を血迷ったのか、そんなわたしが競技ゴルフを始め、その競技ゴルフ生活の記録を書き綴るのがこの連載の趣旨であった。

およそ一年半、34回にわたって掲載してきたコラムも今回で最終回となる。競技ド初心者がサナギから美しい蝶へと華麗なる変身を遂げる過程をお見せ出来ればとひそかな野望を抱いていたのだが、そううまくは行かなかったのが心残りである。

競技系女子が行く、というタイトルの通り、エントリーした大会の紹介、競技ゴルフの雰囲気、会場となったコースの印象や競技にまつわるエピソードなど客観的なレビューを書くつもりでいた。だが、いざ始めてみるとわたしの思い入れや感情ばかりを掘り下げることになり、客観性とは程遠いコラムになった。つまり、無謀にも競技ゴルフに足を踏み入れてしまった女の、七転八倒の、波乱万丈の、涙あり笑いありの、ささやかな成長物語である(成長したかどうかは別にして)。

ひとりよがりの連載にもかかわらず、読者の方から時おり嬉しい感想をいただく機会があった。連載4回を越えたころだったろうか、「自分も試合に出ているような気持ちになる」というメッセージをいただいた。息を詰めながら読み、結果に一喜一憂し、時に涙が溢れる。一緒に自分も戦っているような気持ちになる、と。

友人の一人は、関東女子シニアの試合について書いた「タイムマシーンに乗って」の回が特に気に入っているそうだ。「わたしももっと歳を取ってからのゴルフが楽しみになったよ」。そう言われた時、書き手としてはこれ以上の褒め言葉はないような気がして胸が熱くなった。

競技について書くつもりが、人について触れる機会が多かった。勝ち進むためには他人が落ちるの待つと言った同組の選手、わたしのプレーを高みに引き上げてくれた片手シングルハンデの同伴者、優秀なキャディ、ゴルフの楽しさを教えてくれた地元のおじさんたち、プロアマ大会で出会ったプロたち、ゴルフで再会した25年来の友人、一打の重みを教えてくれた年配のゴルファー、夏の北海道で毎年出会う人たち、名門コースで見守ってくれるウェイター、どん底からわたしを救ってくれた3人の友人。

競技にかぎらず、ゴルフをしていなければ出会う機会のなかった人たちとつながることが出来た。もしかしたら、その人たちとの出会いを忘れずにいたいから、わたしはこうして文章に書きとめておくのかもしれない。

試合では多くの場合が自分の思うようなゴルフが出来ず、負けて、悔しくて、泣いた。かといって、運に恵まれて勝ち抜いたときにも、やはり嬉しくて泣くのである。どっちにしても泣くのだ。厄介な性格である。

そんな時、わたしのそばにはいつも友人がいた。ゴルフを愛してやまないたくさんの友人たち。

思えば、競技に出てみようかと迷っているときに、最後に背中を押したのは友人たちだった。すでに競技ゴルフを楽しんでいた彼らは口を揃えて言ったものだ。「もっと早く競技に出れば良かったと思っているよ」。迷ってなんかいないで、もっと早くにエントリーすればよかった、そう思えるほど競技には学ぶことがたくさんあるよ、もちろん楽しいこともね、と言ってわたしの背中を押してくれたのだった。

それ以来、わたしが試合に出るときにはFacebookやtwitterなどで、友人たちはいつも応援してくれ、見守ってくれていた。

なかでも忘れられないのは、やはり日刊アマ全国大会の片山津での試合の後だろう。悲劇的なゴルフで初日を終え、逃げるようにホテルに戻る途中、携帯電話にメールが届いた。試合の結果を案じて友人が送ってくれたメッセージ。すがるように、崩れ落ちそうな気持ちを書いて返信した。すぐに折り返しで届いた励ましの言葉。また返信…。繰り返しているうちにホテルに着いた。人前で涙を見せずにすんだのは、友人がずっとメールのやりとりに付き合ってくれたからである。

ホテルの部屋で泣き崩れながら、電話で話した相手の第一声は「泣くなよ」だった。だが、その励ましの声もどことなく涙でつまっていた。つまりながらも、「みんな応援してくれてるんだから、ちゃんとFacebookに結果を書くようにね」とまっとうすぎるアドバイスをした。わかっている。そんなことはわかっている。でも、書きたくないなと思っていたのも事実である。

「全国大会で100を越えるなんてさ、みんな笑うだろうね、呆れるだろうね」とわたしは言った。

友人はちょっと声を荒げた。
「そんなことあるものか。みんなはわかってるよ、本当のキミはもっと出来るってことをみんな知ってるよ、今日は調子が悪かったんだなって、みんなはそう思うに決まってる」。わたしはもう一度泣き崩れた。

その夜、北陸に住む友人は仕事が忙しいなか、片道100キロの道を車を飛ばして会いに来てくれた。一緒にご飯を食べ、話を聞いて、わたしの気持ちが落ち着くのをみはからって、深夜また100キロの道を帰って行った。

たくさんの人に支えられて、わたしはゴルフを続けていられるのだなと身に染みた夜だった。

まったく別のタイプの友人もいた。とても仲がいいのに、このときは励ましも慰めのひとこともない。あまりに素っ気なかったので、後になって「心配じゃなかったの?」と聞いてみたことがある。

「何を心配するの? 北陸まで行って、全国大会に出て、夜は旨いものを食べて。良い経験してるなって羨ましく眺めていたよ」

「でも悲惨なゴルフをして、わたしは泣き崩れていたんだよ?」

「泣くのも含めて。全部まるごと、良い経験だよ。そんなこと、ふつう出来ないよ」。顔色ひとつ変えずにさらりとそう言ってのける友人を見て、わたしは何かひとつ荷物を降ろしたような気持ちになった。たぶん、次はもう泣かないだろうな、という予感がした。

あの片山津の夜のことは、この先もきっと忘れられないだろう。地獄で身を焼かれるような苦しい思い。「それこそが競技の醍醐味さ」。全国大会にもたびたび出ている上級者の友人は言う。

「それこそが、予選を通った人だけが味わえるゴルフの醍醐味なのだ」と。

今回を持ってこの連載コラムは終了となる。だが、わたしはこれからも競技ゴルフを続けていくだろう。あの苦しく辛い思い、ゴルフの醍醐味とやらを知った今、その先に何が待っているのか見てみたい。その向こうに何があるのか、確かめなくてはならないと思うのだ。

この連載の第1回に書いた、その昔スクールのプロに聞かれた一言を今でも時々思い出す。
「レジャーゴルフでいいんですか?」
友だちと気楽に、昼にはビールを飲みながらのんびりと遊ぶゴルフももちろん楽しい。だが、緊張感みなぎるなか、1打に集中して勝った負けたを争う競技ゴルフも同じように楽しい。試合のない生活は今のわたしにはもう考えられない。

だから友よ、またどこかで会いましょう。そして、まだ見ぬ友よ、いつかどこかで会いましょう。

※今回を持ちましてゴーゴー以知子「競技系女子が行く!」は終了となります。読者の皆様には本当に感謝しております。ありがとうございました。


ゴーゴー以知子
埼玉在住。家から30分圏内にゴルフ場が15ヵ所ぐらいあります。もっぱら近場の地元ゴルファーですがお誘いがあれば遠方にも出かけて行きます。ウッド系はTaylorMade R9、アイアンはYAMAHA inpresX Z cavity。2011年10月に行われた日本オープン選手権のプロアマ大会に出場。以来、一緒にラウンドしたJ・チョイさんの大ファンです。自身が主催する「いちこ杯」も3年目を迎え、ゴルフ友だちとの大切な触れあいの場となっています。

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